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大阪地方裁判所 昭和57年(ワ)9724号 判決

第一事件原告、第二、第三事件被告

徳重次雄

ほか一名

第一、第二事件被告

下村尚

第一、第二事件被告、第三事件原告

金本信行こと金柄天

第一事件被告

加藤化学株式会社

第二事件原告

岡村茂登子

ほか一名

主文

第一事件について

1  原告徳重次雄、同徳重ノリ子の請求をいずれも棄却する。

2  訴訟費用は、原告らの負担とする。

第二事件について

1  被告徳重次雄、同徳重ノリ子はそれぞれ、原告岡村茂登子に対し、金六二万八、三六九円およびこれに対する昭和五八年四月一七日から支払済まで年五分の割合による金員を、原告株式会社トムに対し、金五一万七、八六四円およびこれに対する前同日から支払済まで年五分の割合による金員を、被告下村尚、同金柄天は各自、原告岡村茂登子に対し、金一二五万六、七三八円およびこれに対する昭和五八年四月一六日から支払済まで年五分の割合による金員を、原告株式会社トムに対し、金一〇三万五、七二九円およびこれに対する前同日から支払済まで年五分の割合による金員を支払え。

2  原告らのその余の請求を棄却する。

3  訴訟費用はこれを四分し、その一を原告らの負担とし、その三を被告らの負担とする。

4  この判決は第1項に限り仮に執行することができる。

第三事件について

1  被告徳重次雄、同徳重ノリ子はそれぞれ、原告金柄天に対し、金一一八万六、二九八円およびこれに対する昭和五五年一月一三日から支払済まで年五分の割合による金員を支払え。

2  原告のその余の請求を棄却する。

3  訴訟費用はこれを四分し、その三を原告の負担とし、その一を被告らの負担とする。

4  この判決は第一項に限り仮に執行することができる。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  第一事件請求の趣旨

被告らは各自、原告徳重次雄に対し、金一〇〇〇万〇、六〇五円およびこれに対する昭和五五年一月一三日から支払済まで年五分の割合による金員を、原告徳重ノリ子に対し、金九一八万二、一〇五円およびこれに対する前同日から支払済はで年五分の割合による金員を支払え。

訴訟費用は被告らの負担とする。

仮執行の宣言。

二  第一事件請求の趣旨に対する答弁

原告らの請求を棄却する。

訴訟費用は原告らの負担とする。

三  第二事件請求の趣旨

被告徳重次雄、同徳重ノリ子はそれぞれ、原告岡村茂登子に対し、金七〇万七、八〇〇円およびこれに対する昭和五八年四月一七日から支払済まで年五分の割合による金員を、原告株式会社トムに対し、金七六万四、一五〇円およびこれに対する前同日から支払済まで年五分の割合による金員を、被告下村尚、同金柄天は各自、原告岡村茂登子に対し、金一四一万五、六〇〇円およびこれに対する昭和五八年四月一六日から支払済まで年五分の割合による金員を、原告株式会社トムに対し、金一五二万八、三〇〇円およびこれに対する前同日から支払済まで年五分の割合による金員を、それぞれ支払え。

訴訟費用は被告らの負担とする。

仮執行の宣言。

四  第二事件請求の趣旨に対する答弁

原告らの請求を棄却する。

訴訟費用は原告らの負担とする。

五  第三事件請求の趣旨

被告らは各自、原告に対し、金四四四万五、〇二〇円およびこれに対する昭和五五年一月一三日から支払済まで年五分の割合による金員を支払え。

訴訟費用は被告らの負担とする。

仮執行の宣言。

六  第三事件請求の趣旨に対する答弁

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

第二当事者の主張

一  第一事件原告、第二、第三事件被告徳重次雄(以下原告次雄という)及び同徳重ノリ子(以下原告ノリ子という)の主張

(一)  訴外亡徳重政次は、別紙交通事故により頭部外傷(脳挫傷、頭蓋底骨折)などの傷害をうけて死亡した。

(二)  責任原因

被告下村には、信号無視、スピード違反、前側方不注視、居眠運転などの過失があつたのであるから、民法七〇九条により、被告金には、加害車を所有し、第一事件被告加藤化学株式会社(以下被告会社という)には、加害車を保有し、それぞれ自己のために運行の用に供していたのであるから、自賠法三条により、いずれも訴外人及び原告次雄、同ノリ子の生じた損害を賠償する責任がある。

(三)  損害

1 訴外人の損害

(1) 逸失利益

訴外人は、事故当時一九歳で、専門学校に在学していたのであるが、本件事故により死亡しなければ、二か年の専門課程を終えた二〇歳から六七歳まで少なくとも四七年間就労が可能であり、生活費は収入の五〇パーセントと考えられるから、同人の死亡による逸失利益を年別のホフマン式により年五分の割合による中間利息を控除して算定すると、二、四三九万八、〇一〇円となる。

(2) 慰藉料 七〇〇万円

2 原告次雄、同ノリ子の損害

(1) 原告次雄は、訴外人の治療費四万六、五〇〇円及び同人の葬儀費用七七万二、〇〇〇円を負担した。

(2) 訴外人の実父母である原告次雄、同ノリ子固有の慰藉料

各人につき、それぞれ二五〇万円。

なお、訴外人に慰藉料請求権が認められない場合には、原告次雄、同ノリ子の慰藉料につき、各自六〇〇万円宛。

3 弁護士費用 原告次雄、同ノリ子につき各一〇〇万円宛。

(四)  権利の承継

原告次雄、同ノリ子は、訴外人の実父母であり、訴外人の死亡によつて、訴外人の損害賠償請求権を、それぞれ二分の一宛相続した。

(五)  損害の填補

原告次雄、同ノリ子は、自賠責保険金より総額二、〇〇三万三、八〇〇円の支払いを受けた。

(六)  本訴請求

よつて、原告次雄、同ノリ子は、それぞれの請求分から、右填補分を二分の一宛充当差引した第一事件請求の趣旨記載のとおりの判決(遅延損害金は民法所定の年五分の割合による。)を求める。

(七)  過失相殺の抗弁

仮りに訴外人に過失があるとしても、本件事故の発生については被告下村にも前記の如く信号無視、速度違反、前側方不注視、居眠運転などの過失があるから、被告金の損害賠償額の算定にあたり、被害者側の過失として、過失相殺されるべきである。

二  右主張に対する被告らの答弁

(一)  (一)の事実中、別紙交通事故が発生したこと及び訴外人が死亡したことは認めるが、訴外人の傷害の部位については知らない。

(二)  (二)の事実中、被告金が加害車を所有し、自己のために運行の用に供していたことは認め、その余の事実は否認する。

(三)  (三)ないし(五)の事実はいずれも知らないし、(七)の事実は否認する。

三  原告岡村及び原告会社の主張

(一)  原告岡村は飲食店「三番」を、原告会社は喫茶店「煉瓦屋」をそれぞれ経営するものであるが、原告らは別紙交通事故により後記の如き損害を受けた。

(二)  責任原因

1 訴外人には、前側方不注視、ハンドル・ブレーキ操作不適の過失があつたのであるから、被告下村とともに民法七〇九条、七一九条に基づく賠償責任があるところ、訴外人は本件事故により死亡し、原告次雄、同ノリ子が同人の相続人として訴外人の損害賠償債務を各二分の一宛相続した。

2 被告下村には、前側方不注視、ハンドル・ブレーキ操作不適などの過失があつたのであるから、訴外人とともに民法七〇九条、七一九条により、被告金には、被告下村を雇用し、同人が被告金の業務の執行として加害車を運転中、前記の過失により本件事故を発生させたのであるから、民法七一五条により、それぞれ原告らの損害を賠償する責任がある。

(三)  損害

1 原告岡村分

(1) 逸失利益

原告岡村は、本件事故当時、飲食店「三番」を経営し、一日平均三万四、九〇〇円の収入を得ていたが、本件事故により、昭和五五年一月一二日から同月一四日までと同月二二、二三日及び同年二月二、三日の計七日間の休業を余儀なくされ、その間二四万四、三〇〇円の収入を失つた。

(2) 店舗建物側壁等修理費用

原告岡村は、本件事故により、右「三番」店舗玄関、側壁などに損傷を受け、右修理費として五三万三、〇〇〇円の支出を余儀なくされた。

(3) 看板・固定テント取替費用

原告岡村は、本件事故により、損傷を受けた固定式店舗用テント・電飾看板及びスタンド式看板の取替費として四三万八、三〇〇円の支出を余儀なくされた。

(4) 弁護士費用 二〇万円

2 原告会社分

(1) 逸失利益

原告会社は、事故当時、喫茶店「煉瓦屋」を経営し、一日平均六万七、四四四円の収入を得ていたが、本件事故により、昭和五五年一月一二日から同月二七日までのうち、定休日三日を除く、一三日間の休業を余儀なくされ、その間八七万六、七七二円の収入を失つた。

(2) 店舗建物側壁等修理費用

原告会社は、本件事故により、右「煉瓦屋」店舗側壁、軒下などに損傷を受け、右修理費として四七万九、〇〇〇円の支出を余儀なくされた。

(3) 弁護士費用 二〇万円

(四)  本訴請求

よつて、原告会社、同岡村は、第二事件請求の趣旨記載(なお、原告会社については内金として)のとおりの判決(遅延損害金は訴状送達の翌日から民法所定の年五分の割合による。)を求める。

(五)  被告金、同下村の時効の援用に対する再抗弁

原告岡村、原告会社は被告金、同下村に対し、昭和五七年一二月一八日内容証明郵便により本件事故で生じた前記損害を賠償するように催告し、右内容証明郵便は同月二〇日到達した。その後、六か月以内である昭和五八年四月一一日に原告岡村、原告会社は右被告らを相手方とする本件交通事故に基づく損害賠償請求の訴を提起したのであるから、被告金、同下村に対する損害賠償請求権の消滅時効は中断した。

四  右主張に対する答弁

(一)  被告金、同下村の答弁

(一)の事実中、別紙交通事故が発生したこと及び(二)の2の事実中、被告金が被告下村を雇用し、同人が被告金の業務の執行として加害車を運転中、本件事故が発生したことは、いずれも認めるが、(二)の2の事実中、被告下村に過失があつたとの事実は否認し、その余の事実は、いずれも知らない。

(二)  原告次雄・同ノリ子の答弁

(一)の事実中、別紙交通事故が発生したこと及び(二)の1の事実中、訴外人が本件事故により死亡し、原告次雄・同ノリ子が同人の相続人として訴外人の債権債務を各二分の一宛相続したことは認めるが、訴外人に過失があつたとの事実は否認し、その余の事実は、いずれも知らない。

五  被告金、同下村、被告会社の主張

(一)  被告金は、昭和五五年一月ごろには運送業を営んでいたものであるが、別紙交通事故により後記の損害を受けた。

(二)  責任原因

訴外人は、被害車を運転して、本件交差点を南から北へ通過しようとしたのであるから、信号機の表示に従うのはもとより、減速徐行すべきであるのに、これを怠り、対面信号が赤色を表示しているのを無視し、かつ高速度で本件交差点に進入し、本件事故を発生させたのであつて、訴外人には民法七〇九条に基づき被告金の後記損害を賠償すべきところ、訴外人は本件事故により死亡し、原告次雄、同ノリ子が訴外人の両親として訴外人の損害賠償義務を各二分の一宛相続した。

(三)  被告金の損害

1 加害車修理費

被告金は、加害車の所有者であるが、本件事故により損傷を受けた加害車の修理費用として二三二万三、〇二〇円の支出を余儀なくされた。

2 代車料金

本件事故により加害車を運行させることができなくなり、そのため加害車に積載していた荷物を他の車両に積み替えて事故現場より目的地まで運送することを余儀なくされ、右代車の借用料として七万二、〇〇〇円を支出した。

3 休車料

被告金は、加害車を運行して運送業務を行つた場合に、一日平均二万五、〇〇〇円の収入を得ていたが、本件事故により、加害車の修理期間である昭和五五年一月一三日から同年二月二八日まで合計四六日間にわたり加害車の休車を余儀なくされ、その間一一五万円の収入を失つた。

4 加害車の価格落ち

加害車を今後下取りしてもらう場合、本件事故により損傷を受けたことから加害車の査定価額が五〇万円低下する。

5 弁護士費用 四〇万円

(四)  本訴請求

よつて、被告金は原告次雄、同ノリ子に対し、第三事件請求の趣旨記載のとおりの判決(遅延損害金は民法所定の年五分の割合による。)を求める。

(五)  免責の抗弁

本件事故は訴外人の一方的過失によつて発生したものであり、被告下村には何ら過失がなかつた。かつ加害車には構造上の欠陥または機能の障害がなかつたから、被告金、被告会社には、自賠法三条但書により訴外人、原告次雄、同ノリ子に対する損害賠償責任がない。

すなわち、本件事故は、訴外人が、前記の如く、信号無視、無謀運転をしたために、発生したものである。

(六)  過失相殺の抗弁

仮りに免責の主張が認められないとしても、本件事故の発生については訴外人にも、前記のとおり、信号無視、無謀運転の過失があるから、原告次雄、同ノリ子及び訴外人の損害賠償の算定にあたり、過失相殺されるべきである。

(七)  時効の援用

原告会社、原告岡村の被告金、同下村に対する不法行為に基づく損害賠償請求の件は、本件事故発生の翌日より三年を経過した昭和五八年一月一二日の経過後になされたものであるから、右請求権は時効により消滅した。

六  右主張に対する原告らの答弁

(一)  原告次雄、同ノリ子の答弁

(一)の事実及び(二)の事実中、訴外人が本件事故により死亡し、原告次雄、同ノリ子が同人の両親であつて同人の権利義務を相続したことは認めるが、(三)、(五)、(六)の事実は否認する。

(二)  原告岡村及び原告会社の答弁

(七)の事実は認める。但し、時効によか消滅したとの主張は争う。

第三証拠

記録中の書証目録及び証人等目録記載のとおり。

理由

第一事故の発生

別紙交通事故が発生したことは、当事者間に争いがない。

第二責任原因

一  被告会社及び被告金の責任

被写体については争いがなく、その余については弁論の全趣旨により原告岡村、原告会社の主張どおりの写真であると認められる検丙第一号証の五、六、被告下村、同金各本人の尋問結果及び弁論の全趣旨並びに当事者間に争いのない事実を総合すれば、被告金は被告下村を雇用し、同人が被告金の命により業務の執行として被告金の所有する加害車を運転中に本件事故を発生させたこと、しかしながら、加害車は、もつぱら被告会社の荷物を輸送しており、加害車車体にも被告会社名を表示し、本件事故時も、被告会社の荷物である液糖を愛知県常滑市から兵庫県加古川市まで輸送する途中であつたこと、被告金は、運輸大臣の免許(但し、道路運送法施行令により右権限は陸運局長に委任されている)を受けずに、自動車運送事業を経営しており、加害車を運送の用に供していたこと(なお、被告金が加害車を所有し、運行の用に供していたことは原告次雄、同ノリ子と被告金の間で争いがなく、被告金が被告下村を雇用し、同人が被告金の業務の執行中に、本件事故を発生させたことは、原告会社、原告岡村と被告金の間で争いがない。)が認められ、右認定を左右するに足りる証拠はない。

右事実によれば、被告金には、自賠法三条により、後記免責の抗弁が認められない限り、本件事故による訴外人、原告次雄、同ノリ子の損害を賠償する責任が、また、民法七一五条一項により、被告下村に本件事故の発生につき過失が認められる限り、本件事故による原告会社、原告岡村の損害を賠償する責任がそれぞれ存在することは、明らかである。

また、右事実によれば、被告会社にも、被告金の所有する加害車をもつぱら自己の業務の執行のために使用し、本件事故時も被告会社の荷物を輸送する業務の執行中であつたというのであるから、加害車の保有者として、自賠法三条により、後記免責の抗弁が認められない限り、本件事故による訴外人、原告次雄、同ノリ子の損害を賠償する責任がある。

二  訴外人(相続人原告次雄、同ノリ子)及び被告下村の責任

(一)  成立に争いのない甲第一、第二号証、乙第一、第二号証、被告ら主張通りの写真であることに争いのない検乙第一ないし第九号証、証人矢島修の証言、被告下村本人尋問の結果を総合すれば、次の事実が認められ、他に右認定を覆すに足りる証拠はない。

1 本件交差点は、東西道路の幅員が一四・四メートル(本件交差点においては右折車のためそれぞれ右折専用車線が設けられていて、直進車は片側二車線のみを通行しうる。)、南北道路の幅員が八ーメートル(片側一車線)の、信号機により交通整理の行なわれている交差点であつて、本件交差点北東端の民有地には宣伝用の立看板があり、また、東西道路横断のための歩行者用横断陸橋の北側階段が設置されているため、東西道路を東から西へ進行する車にとつては、南北道路右側から本件交差点へ進入する車両の見通しがきわめて悪く、南北道路を北から南へ進行する車にとつては、東西道路左側から本件交差点へ進入する車両の見通しが悪い。

2 被告下村は、加害車を運転し、東西道路を東から西へ道路中央寄り直進車線上を進行して本件交差点手前約九五メートルの地点に至つた際、本件交差点対面信号が赤色を表示しているのを認めてアクセルペタルから足を離して減速し、約六一メートル進行したところで対面信号が青色に変つたのを認めて加速し、続いて約三〇・三メートル進行した際に約一三・二メートル右前方に南北道路を北から南へ本件交差点内に進入してくる被害車を認め、急停車の措置をとるも及ばず、約一〇・一メートル進行した本件交差点内で被害車と衝突し、自車右側面に衝突してきた被害車を自車車両下部にまき込んだ状態のまま約二四・四メートル左寄り前方に進行し、信号機制禦装置のある電柱に衝突し、歩道に設置されていた防禦柵を破り、被害物件に突つ込んではじめて停止した。

3 訴外人は、被害車を運転し、南北道路を北から南へ進行して本件交差点に約九・六メートル進入し、東西道路を東から西へ進行した際に本件交差点内に進入してきた加害車右側面に衝突し、加害車下部にまき込まれたまま約二四・四メートル引きずられて停止し、被害車は大破した。

4 本件事故現場の道路状況、道路の痕跡などをみるに、本件交差点付近道路はアスフアルト舗装のなされた、平坦な、かつ、事故当時においては乾燥していた道路であつて、車両の制限速度は公安委員会により最高速度を時速四〇キロメートルと指定されている。本件事故現場には、被害車、加害車のスリツプ痕はなく、衝突地点から停止地点までは擦過痕があつたものの、本件交差点信号機は、交差点南西寄りに設置されていた信号制禦装置が加害車の衝突により破損したため、本件事故直後、すでにその機能を停止していた。

5 本件交差点の信号機は、路線制禦のなされた、自動感応式の系統式信号機であつて、信号機の表示周期は、事故時においては、東西信号が青五三秒、黄三秒、赤三四秒、右折矢形七秒、全赤三秒、南北信号が青二八秒、黄四秒、赤六六秒、全赤二秒の各一周期一〇〇秒の周期となつている。

(二)  右の如き、被告下村の運転する加害車の進路状況、本件交差点に設置された、事故時における信号機の表示周期によれば、本件交差点内に進入した際の信号機の表示は、加害車対面信号は青色を、被害車対面信号は赤色をそれぞれ表示していたものと推認される。

なお、この点に関し、証人矢島修、同柴田哲郎の各証言によれば、本件交差点に設置された信号機は、時々故障し、修理がなされたことがあつたことが認められるものの、前記認定の如く、事故直後に本件信号機がその機能を停止した原因としては加害者が信号機制禦装置をその衝突により破損したためであつたことをも考慮すれば、本件事故前においても本件信号機がすでに故障していたものとすることはできない。また、事故直後における、結果の重大性に驚愕している被告下村の言動のみで、被告下村の捜査段階における供述の信用性を否定することはできない。

ところで、右事実によれば、被告下村が急制動の措置をとつてのち、約一〇・一メートル進行した本件交差点内で被害車と衝突し、被害車を加害車右側下腹部にまき込んだ状態のまま約二四・四メートル進行し、信号機制禦装置の設置された電柱に衝突し、続いて歩道に設置されていた防禦柵を破り、被害物件に突つ込んで停止したものの、加害車のスリツプ痕は発見できなかつたというのであるから、本件交差点附近道路は、平坦であつて、アスフアルト舗装がなされ、事故当時本件道路が乾燥していたこと及び加害車の車種などを考え合せれば、空走距離は少なくとも約一〇・一メートル以上、摩擦係数は〇・八程度であつたものというべく、そうすると、加害車の本件事故直前の進行速度は、遅くとも時速四八・六キロメートル以上の速度であつたものと推認しうる。

(三)  右(一)及び(二)の事実によれば、訴外人には、被害車を運転して本件交差点を通過しようとしたのであるから、信号機の表示する信号に従い、減速したうえで進行すべき注意義務があるのに、これを怠り、対面信号が赤色を表示しているのにこれを無視し、減速することなく本件交差点に進入した過失があり、訴外人には、民法七〇九条により、原告会社、原告岡村、被告金の損害を賠償する責任があるところ、原告次雄、同ノリ子が訴外人の死亡により訴外人の債務を各二分の一宛相続したことは当事者間に争いがなく、従つて、原告次雄、同ノリ子は、相続分に応じた金員につき、右原告会社らの損害を賠償する責任がある。

一方、右(一)及び(二)の事実によれば、被告下村には、加害車を運転して本件交差点を通過するに際し、信号機の表示する信号に従うのはもとより、本件交差点右側の見通しが悪いのであるから前方及び右側方を注視し、また、交差点に進入するには時速四〇キロメートルと制限された速度を遵守するだけではなく、減速して進行しなければならない注意義務があるのに、これを怠り、信号機が青色を表示していることに気を許し、本件交差点約四・五メートル手前で約一三・二メートル右前方に本件交差点へ進入してくる被害車をはじめて認め、また、減速することなく、制限速度を超える時速約四八・六キロメートル以上の速度で漫然と本件交差点に進入した過失があり、訴外人に信号無視の過失があることを考慮しても、被告下村の右過失とくに速度遵守義務違反、減速義務違反の過失責任を阻却するものではなく、民法七〇九条により、訴外人、原告次雄、同ノリ子、原告会社、原告岡村の損害を賠償する責任を逸れることはできない。従つて、被告下村に右の如き過失が認められるのであるから、その余の点を判断するまでもなく、被告金及び被告会社の免責の抗弁は理由がない。また、右事実によれば、訴外人と被告下村には、共同不法行為者として、七一九条に基づき、各自、原告会社、原告岡村の損害を賠償すべき責任がある(不真正連帯債務)。

第三損害

一  訴外人、原告次雄、同ノリ子の損害

(一)  訴外人の死亡

当事者間に争いのない事実及び成立に争いのない甲第三、第四号証によれば、訴外人は本件事故により、頭部外傷(脳挫傷、頭蓋底骨折)、第二、第三、第四頸椎間脱臼、下顎骨々折の傷害を受け、昭和五五年一月一二日午前三時二〇分頃死亡したことが認められる。

(二)  治療費

成立に争いのない甲第五号証の一によれば、本件事故により負傷した訴外人の治療のため四万六、五〇〇円を要したことが認められる。

(三)  訴外人の逸失利益

前掲甲第三、第四号証、証人徳重君雄の証言及び弁論の全趣旨によれば、訴外人は事故当時一九歳の独身の男性で、専門学校の生徒であつたが、二年の在学期間経過後の二〇歳から六七歳まで少なくとも四七年間にわたり、一か年平均二〇四万七、五〇〇円(昭和五五年度賃金センサス第一巻第一表産業計、企業規模計、学歴計、二〇歳男子労働者平均賃金)以上の収入を得て稼働することができたのに、本件事故により、これを得ることができなくなつたことが認められ、訴外人が独身であつたことを考慮すれば、生活費は収入の五〇%と考えられるから、訴外人の死亡による逸失利益を年別のホフマン式により年五分の割合による中間利息を控除して算定すると、二、四三九万八、〇一〇円となる。

(四)  慰藉料

本件事故の態様、訴外人の受傷の部位、程度、年齢、死亡の事実及び親族関係その他諸般の事情を考え合せると、訴外人につき七〇〇万円、原告次雄、同ノリ子につき各二五〇万円とするのが相当であると認められる。

(五)  葬儀費用

弁論の全趣旨により真正に成立したものと認められる甲第六、第七号証によれば、原告次雄は訴外人の葬儀のためその費用として少なくとも七七万二、〇〇〇円を支出したことが認められるものの、本件事故と相当因果関係にある葬儀費は右のうち五〇万円とするのが相当である。

(六)  権利の承継

原告次雄、同ノリ子は、訴外人の死亡により、訴外人の被告らに対する損害賠償請求権を各二分の一宛相続したことは、当事者間に争いがない。

二  原告岡村及び原告会社の損害

(一)  原告岡村の損害

原告岡村本人尋問の結果により真正に成立したものと認められる丙第二号証の一、二、第三号証の一、二、第四号証の一、二、第五号証の一、二並びに原告岡村本人尋問の結果によれば、原告岡村は大阪府門真市大字三番に所在する飲食店「三番」を経営していたところ、本件事故により、〈イ〉店舗建物側壁などが破壊され、右修理のため五三万三、〇〇〇円の費用を支出し、〈ロ〉看板・固定テントが破壊され、右修理のため四三万八、三〇〇円の費用を支出したことが認められ、右認定を左右するに足りる証拠はない。

また、原告岡村本人尋問の結果により真正に成立したものと認められる丙第八、第九号証及び原告岡村本人尋問の結果(但し、後記措信しない部分を除く)並びに弁論の全趣旨によれば、原告岡村は飲食店「三番」を経営し、同店における事故前三か月間は一か月(稼働平均一か月二九日)平均一七三万〇、八三六円(円未満切捨て以下同じ)の売上げがあつたものの、原材料の仕入れ原価及び光熱費などの必要諸経費を差引けば、右売上げのうち少くともその三九・六%(所得率)に相当する六八万五、四一一円の利益があつたものというべく、従つて、飲食店「三番」における事故前三か月の一日平均利益は二万三、六三四円であつたところ、本件事故により、七日間の休業を余儀なくされ、その間合計一六万五、四三八円の収入を失なつたことが認められ、右認定に反する飲食店「三番」における経費についての原告岡村の供述部分は信用できず、他に右認定を覆すに足りる証拠はない。

計算式

{(173万0,836円×0.396)÷29日}×7日≒16万5,438円

円未満切捨て 円未満切捨て

(二)  原告会社の損害

原告会社代表者本人尋問の結果により真正に成立したものと認められる丙第六号証の一、二、官署作成部分については争いなく、その余は原告会社代表者本人尋問の結果により真正に成立したものと認められる丙第一〇号証の一、二、原告会社代表本人尋問の結果並びに弁論の全趣旨によれば、原告会社は、飲食業などを営む株式会社であつて、大阪府門真市大字三番に所在する喫茶店「煉瓦屋」を経営していたものであるが、本件事故により、〈イ〉店舗建物側壁などが破損し、右修理のため四七万九、〇〇〇円を支出したこと、〈ロ〉原告会社は、同店においては料理飲食のみならずテレビゲーム機からの収入があり、事故前一年間(昭和五四年一月から同年一二月まで)の収入は、料理飲食収入で二、〇五六万六、〇〇〇円、その他の収入で七六一万八、〇〇〇円あつたものの、原材料の仕入れ原価、光熱費などの必要諸経費を差引けば、事故前一年間で、右売上げのうち少なくともその四五・五%(所得率)に相当する一、二八二万三、七二〇円の利益があつたものというべく、従つて、喫茶店「煉瓦屋」における事故前一年間の一日平均利益は三万五、一三三円(円未満切捨て)であつたところ、本件事故により、一三日間の休業を余儀なくされ、その間合計四五万六、七二九円の収入を失なつたことが認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。

計算式

{(2,818万4,000円×0.455)÷365}×13日≒45万6,729円

(昭和54年度収入) 円未満切捨て

(三)  原告岡村らの弁護士費用

本件事案の内容、審理経過、認容額等に照すと、原告岡村らが本件事故による損害として賠償を求め得る弁護士費用の額は、原告岡村につき一二万円、原告会社につき一〇万円とするのが相当であると認められる。

三  被告金の分

(一)  加害車修理費

被告金本人尋問の結果により真正に成立したものと認められる乙第三、第四、第六号証によれば、被告金は、本件事故により破損した被告金所有の加害車を、大阪日産デイーゼル株式会社に修理依頼し、右修理費として右会社に対し、二三二万三、〇二〇円を支払つたことが認められる。

(二)  代車料金

被告金本人尋問の結果により真正に成立したものと認められる乙第五号証、被告金本人尋問の結果によれば、被告金は、加害車が、本件事故により、その積荷を、目的地である兵庫県加古川市まで輸送することができなくなつたことから、大栄運送有限会社へ代車の賃貸を依頼し、右代車費用として七万二、〇〇〇円を支出したことが認められる。

(三)  休車料

被告金本人尋問の結果により真正に成立したものと認められる乙第七号証、被告金本人尋問の結果(後記措信しない部分を除く。)並びに弁論の全趣旨によれば、本件事故により破損した加害車の修理のため、昭和五五年一月一二日から同年二月二八日までの期間を要したこと、被告金は、事故当時、昭和一一年三月二日生まれの四三歳で、運送車両を四台所有し、従業員四名を雇用し、少なくとも被告金個人の労働力の対価として年間四一八万〇、七〇〇円(昭和五五年度賃金センサス第一巻第一表産業計、企業規模計、労歴計、被告金と同年代男子労働者平均賃金)の収入を得ていたことが認められ、被告金本人尋問の結果のうち、右認定に反する供述部分は措信しえず、他に右認定を覆すに足りる証拠はない。右事実によれば、被告金は、加害車を含めた四台の運送車両で年間四一八万〇、七〇〇円の収入を得ていたところ、本件事故のため、加害車につき四八日間の休車を余儀なくされたというのであるから、その間合計一三万七、四四七円(円未満切捨て)の損害を受けたものというべきである。

計算式

418万0,700円÷4台×48/365日≒13万7,447円

なお、被告金本人尋問の結果中には、加害車の運行により一日平均二万五、〇〇〇円の利益を得ていた旨の供述がみられるものの、被告金が求める休車損は、道路運送法に違反する道路運送事業の無免許営業にかかるいわゆる事業所得の損失を求める趣旨であれば、無免許事業者が締結する運送契約が私法上有効であることを考慮してもなお、被告金が無免許事業者(道路運送法によれば、一般でなく特定自動車運送事業に該る営業を経営していたとしても、被告金には懲役刑を含む刑罰が科せられ、特に懲役刑と罰金刑の併科刑が選択刑として規定されている。)であることを知ることのできない交通事故加害車に対し、自己の不法な行為をもとに事業所得の損失を求める請求としては、これを認めることができず、被告金個人の休業損害として自己の労働に対する対価を請求する限度で、これを交通事故加害者に対し請求しうるものというべきであるが、仮りに、右の如き事業所得に相当する収益についての損失を求めることが、適法であつて、かつ相当であるとしても、被告金の記憶にもとづく三年前の営業利益を、当時の売上げから必要諸経費をも差引いた正確な数値としての供述として、これを採用することは、とうていできない。しかしながら、事故当時の被告金の加害車休車にもとづく休業損害(仮りに、右の事業所得に相当する収益を適法であつて、かつ相当であるとして、これを損失として把握しても)の算定根拠となる所得としては、少なくとも、所有運送車両四台を運行させて被告金と同年代男子労働者平均賃金以上の収入を得ていたことは、被告金の右の供述のみでもこれを認めることができるのであるから、被告金の、本件事故に基づく加害車の休車による損害は、前記の如く認定するのが相当である。

(四)  加害車の価格落ち

被告金本人尋問の結果及び弁論の全趣旨によれば、加害車は、本件事故により破損した部分を修理したこと、しかしながら、加害車に溶接の痕跡が残り、キヤブの取替えをしたことから加害車が事故遭遇車であることが外観上明らかとなり、従つて、下取りの際にはいわゆる価格落ちがあるものの、いまだ加害車を転売していないことが認められる。

ところで、一般に、事故により破損した個所を修理してもなお価格の減少があるときは、被害者はその減少分の請求をしうるのであるが、右価格の減少があつたとして加害者にその損失を請求し得る場合として、〈イ〉修理することができなかつた機能、美観の障害、〈ロ〉使用期間の短縮、〈ハ〉単に事故車であるということのみで下落する交換価格の低下(以下、交換価格の低下という)などが考えられるものの、右のうちの交換価格の低下については、修理直後における通常予想しうる一般的交換価格の低下があつたというのみでは、被害者において、今だ現実に損害が生じたものとはいいえない状態にあるのであるから、一般的交換価格の低下(事故に遭遇しなかつた場合の評価額から損傷修理後の査定価格を差引いたもの)をもつて、価格落ちがあつたものとして、これを加害者に請求しえないものというべきである。けだし、物を、下取りにするなどしてこれを転売することをせず、機能停止まで使用した場合には、右交換価格の低下が、現実には生じなかつたのに、交換価格の下落があつたとしてこれを認める結果となるからである。また、転売時期が事故時より相当の年数経過後になされれば、相対的に右交換価格も低下する。従つて、事故により単に物の右交換価格が低下したとして加害者にこれを請求しうるといいうるためには、被害者において、これを転売したことにより現実に損害が発生したことを要するものと解すべきである。また、修理することのできなかつた美観の低下による物の価格落ちについては、本件の如く、物が、荷物輸送用トラツクであつて、特定の顧客に対してのみ使用されるにすぎない場合には、特に著しい美観の低下が認められ、かつ、通常人をして荷物輸送用トラツクとしても見るに耐えないものと認められる場合、もしくは、特に保有者において相当と認められる主観的事情の存する場合はともかく、原則として、その美観の低下による価格落ちを損害として加害者に対し請求しえないものというべきである。

そうすると、右認定の如く、加害車をいまだ転売せず、右の交換価格の低下が顕在化していない本件加害車の一般的価格落ちを請求する被告金の請求は、本件事故による損害としてこれを認めることができない。

第四過失相殺

前記第二の二認定の事実によれば、本件事故の発生については、訴外人にも信号無視、減速義務違反の過失が認められ、また、被告下村にも前側方不注視、速度遵守義務違反、減速義務違反の過失が認められ、また、車両の種類、事故発生時刻、道路状況など諸般の事情を考慮すれば、過失相殺として、訴外人の両親であつて、その相続人である原告次雄、同ノリ子の相続した訴外人及び原告ら固有の損害の八割五分を、被告下村の雇主である被告金の損害の一割五分をそれぞれ減ずるのが相当である。

第五損害の填補

原告次雄、同ノリ子は、自賠責保険金より総額二、〇〇三万三、八〇〇円の支払いを受け、各二分の一宛右原告らの損害に填補したことは、右原告らにおいて自認するところである。

よつて、原告次雄、同ノリ子の前記損害額の八割五分を減じた額から右填補分を差引くと、右原告らの残損害額はない。

第六原告次雄、同ノリ子、被告金の弁護士費用

本件事案の内容、審理経過、認容額などに照すと、本件事故による損害として、原告次雄、同ノリ子が被告らに対し弁護士費用の支払いを求めた請求を認めるのは相当でなく、被告金が原告次雄、同ノリ子に求めうる弁護士費用の額はそれぞれ一一万円宛とするのが相当である。

第七時効の援用及びその中断

原告会社、原告岡村の被告金、同下村に対する不法行為に基づく損害賠償請求の訴が、本件事故発生の翌日より三年にあたる昭和五八年一月一二日の経過後になされたことは当事者間に争いがなく、成立に争いのない丙第一号証の一、三、四によれば、原告岡村、原告会社は被告金、同下村に対し、昭和五七年一二月一八日内容証明郵便により本件事故で生じた損害を賠償するように催告し、右内容証明郵便は同月二〇日に右被告らに到達したことが認められ、その後、六か月以内である昭和五八年四月一一日に原告会社、原告岡村は右被告らを被告とする不法行為に基づく損害賠償請求の訴を提起したことは記録上明らかである。

従つて、原告会社、原告岡村の被告金、同下村に対する本件不法行為に基づく損害賠償請求権の消滅時効は中断したものというべきである。

第八結論

よつて、原告次雄、同ノリ子は、それぞれ原告岡村に対し、金六二万八、三六九円およびこれに対する訴状送達の翌日であることが記録上明らかな昭和五八年四月一七日から支払済まで年五分の割合による金員を、原告会社に対しそれぞれ金五一万七、八六四円(円未満切捨て)およびこれに対する前同日から支払済まで年五分の割合による金員を、被告金、同下村は各自、原告岡村に対し金一二五万六、七三八円およびこれに対する訴状送達の翌日であることが記録上明らかな昭和五八年四月一六日から支払済まで年五分の割合による金員を、原告会社に対し金一〇三万五、七二九円およびこれに対する前同日から支払済まで年五分の割合による金員を、原告次雄、同ノリ子は、それぞれ被告金に対し金一一八万六、二九八円(円未満切捨て)およびこれに対する本件事故発生の翌日である昭和五五年一月一三日から支払済まで年五分の割合による金員を、それぞれ支払う義務があり、原告岡村、原告会社、被告金の各請求は右の限度で正当であるから認容し、その余の請求及び原告次雄、同ノリ子の各請求は理由がないから棄却することとし、訴訟費用の負担につき民訴法八九条、九二条、九三条、仮執行宣言につき同法一九六条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 坂井良和)

別紙交通事故

1 日時 昭和五五年一月一二日午前三時二〇分頃

2 場所 大阪府門真市大字三番九五二番地先、信号機の表示により交通整理の行なわれている交差点

3 加害車 大型貨物自動車(大型タンクローリー一〇屯車・登録番号名古屋八八や三二七九号・以下加害車という)

右運転者第一、第二事件被告下村尚(以下被告下村という)右所有者第一、第二事件被告、第三事件原告金柄天(以下被告金という)

4 被害車普通乗用自動車(日産サニー一二〇〇CC・登録番号大阪五七ち一四六号・以下被害車という)

右運転者訴外亡徳重政次(以下訴外人という)

5 被害物件

第二事件原告岡村茂登子(以下原告岡村という)の経営する大阪府門真市大字三番に所在の飲食店「三番」第二事件原告株式会社トム(以下原告会社という)の経営する同所所在の喫茶店「煉瓦屋」

6 態様

訴外人運転の被害車が南北道路を北から南に進行すべく本件交差点に進入したところ、東西道路を東から西に進行すべく本件交差点に進入した被告下村運転の加害車と衝突し、加害車が被害車を自車車両下部にまき込んだまま被害物件に突つ込んで停止。

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